第49回 橋本市・谷山様「便利な二地域居住」

今回お伺いしたのは、橋本市高野口町の谷山様です。
大阪府河内長野市に自宅がありますが、橋本市の旧高野口町の古民家を「第二の住まい」として楽しんでおられます。
「別荘」ではなく「第二の住まい」というのは、河内長野市の自宅から車で1時間もかからないため、1年の3分の1はこちらに来ている「二地域居住」だからです。

谷山様ご夫妻築百年くらいは経っているだろうという母屋と谷山様ご夫妻。
先日はテレビ朝日の「人生の楽園」にも出演されましたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。

夢をかたちに

谷山様はもと中学校の美術教師で、画家としても活動しておられました。大阪の自宅はアトリエを中心にした近代的な造りになっています。
画家としての活動に専念するため、定年より少し早く退職しました。同い年の奥様も小学校教師だったのですが前後して退職。体操教室など、地域での活動を始めました。

そのころ、絵を通じて知り合った友人が奈良県で田舎暮らしを始めました。訪れるうち、周りの自然や近隣とのお付き合いなど、都会では得られない暮らしへの思いが強くなってきました。

「近い田舎」で物件を

田舎暮らしにも憧れるが、画家としての活動の拠点は河内長野市の自宅。そこで、泉南の山沿いや奈良なども含め、自宅から車で1時間以内を条件に探し始めました。
じっくりと探しているうちに出会ったのが、ここ橋本市高野口町嵯峨谷。谷あいなのですが南向きで、少し広くなったところにある10軒ほどの静かな集落です。来てみれば街から遠いように思えますが、京奈和自動車道の高野口ICからわずか4.5km。河内長野市の自宅からも車で45分ほどと、教師時代の通勤時間の半分でした。

橋本市は大阪中心部からの南海高野線が通っているほか、河内長野市からの道路も整備されているため、大阪のベッドタウンでもあります。市街地にも近く、自宅周辺になかったコメダ珈琲店さえ近くにあるほど、生活や買い物に不便はありません。

そのうえ、前のオーナーがリフォームしていたため、古民家とはいえ不便はありません。家のすぐ横にちょうどいい広さの畑もあります。欲を言えば「蔵」が欲しかったのですが、2階建ての物置もあります。
希望通りの条件で、2014年の春から「二地域居住」を始めました。

古民家の良さを生かして

前オーナーが古民家の良さを生かしながらリフォームしていたため、そこに谷山様ご夫妻のさまざまな楽しい工夫をされています。

玄関玄関を入ると、谷山様の絵などの作品が出迎えてくれました。奥に見えるのは古いオルガン。

 

室内伝統的な「田」の字の部屋。タンスは奥様が結婚時に持ってきたものですが、まるでこの家に来るのが決まっていたように馴染んでいます。
梁が太く、天井が高いため、解放感もあります。

 

床の間床の間の絵はもちろんご主人の作品。変わった額縁と思ったら、これもご主人の作だそうです。

 

ダイニングキッチン

田の字の部屋に続く台所。もとは土間だったものを、板の間にして使いやすくリフォームされていました。

 

畑1
畑2
家の横にある畑。十分な広さにビニールハウスもあり、いろいろな野菜や果実を栽培しています。

野菜がお客様?

奥様は年4~5回、歌のステージに立つことがあります。大阪でのライブハウスなどで、シャンソン・ジャズなど幅広いレパートリーを披露されているそうです。
実はその練習にも畑が活用されています。畑の野菜を、ライブ会場のお客様(?)に見立てて練習されているそうです。
音楽を聞かせて野菜栽培というのも聞きますが、それだけ愛情を持って育てられた野菜や果物は、きっとおいしく育つでしょう。
また、地区内に「ふるさと体験村」(橋本市高野口山村交流促進センター)があり、そちらの恒例イベントのときにも歌う機会もあるそうです。

天井と梁1
天井と梁2
高い天井と太い梁。お二人の集めていたものの中から、似合うものを飾り、この家の雰囲気や良さをさらに引き立てています。

物置
物置の2階
畑の隅に2階建ての物置。1階には農作業の道具などが入っているほか、2階にはご主人のミニアトリエも。さながらご主人の「秘密基地」のようです。

地域との交流

訪れはじめて嬉しかったのが、地域の方のあたたかさ。ちょうどいい距離で家が建つ集落で、気さくに声をかけてくれたり、おすそ分けをいただいたりします。
また、近所の奥様が「男性陣はすぐに集まって飲むけど、女性陣も集まりましょうよ」と言って、歓迎会や交流会を開いてくれたりしました。

谷山様から積極的に挨拶などをするのもありますが、たまにニュース等で聞く田舎の閉鎖性も感じません。聞いてみると、街に近いので会社などに勤めていた方がほとんど。皆さん、町と田舎のいいところをバランスよく取り入れているようです。

移住にも一役

この地を気に入った谷山様は、橋本市の定住促進にも協力し、パンフレットへの掲載等にも協力しておられます。
最近、近所に新しい移住者がやってきました。30代のご夫婦と子供の若い移住者です。物件探しで来られたときに谷山様が会い、集落の良さを熱く紹介したのが決め手だったようです。
ご主人はデザイナーで、画家である谷山様とも話が合うのもあり、谷山様も集落の皆様も大歓迎。さっそく谷山様宅のガレージで歓迎会を開いたそうです。

集落風景田畑を挟んで隣家。寂しいほど遠すぎず近すぎない適度な距離感があります。

 

橋本市高野口町

「高野口」という名の通り、かつては高野山への参詣口・宿場でした。現在の和歌山線の高野口駅が開通したのは明治30年代、現南海高野線が大正初期に橋本駅まで開通したことで、高野口駅前には旅館やお店が立ち並び賑わったそうです。その賑わいは、大正後期に南海高野線が高野下駅まで延伸されるまで続いたそうです。

旧葛城館

旧葛城館

高野口駅前に建つ木造三階建ての旅館。(現在、旅館は営業していません)
国登録有形文化財です。平成24年度に保存修理が行われました。
高野口駅開業当時の建築とされています。2階・3階は総ガラスで、明治後期としては珍しかったのではないでしょうか。

高野口小学校

旧高野口尋常高等小学校校舎(高野口小学校)

重要文化財でありながら、耐震工事を施して現在も高野口小学校として利用されています。
昭和12年の建築で、正面の横長の棟に4棟が櫛型につながった、戦前期の木造校舎建築の特徴を良く示している歴史的価値が高いものとされています。

参考リンク

橋本市の紹介や定住支援

テレビ朝日「人生の楽園」