第45回 貴志川町 豊原様「古い旅館をゲストハウスとして再活用」

オーナーと貴水苑

今回は、紀の川市貴志川町で一棟貸しゲストハウス「貴水苑」を経営している豊原様にお話をお伺いしました。

貴志川は高野山付近を水源とする紀の川水系最大の支流です。町名も「貴志川町」となっているくらい、川を中心とした地域です。
近くの「貴志駅」は和歌山電鐵貴志川線の終着駅で、猫の駅長「たま」(現在は「ニタマ」)が有名で、多くの観光客が訪れています。

「貴水苑」の付近はホタルの棲む清流として知られ、ホタルの鑑賞時期には観察施設「ほたるの館」も開館します。対岸には「大國主神社」があり、後鳥羽上皇のお歌「ふたまたや 又二股の川中に しるしの鳥帽子われは立ておく」も残っています。

目の前の「国主渕」は、烏帽子(えぼし)岩、鞍懸(くらかけ)岩、天狗岩、龍宮岩などの名前が付いた大岩があり、かつては名勝として賑わっていました。10年ほど前までは屋形船の遊覧船があり、川魚料理やホタル観賞を楽しんでいたようです。そのため、貴志川線も近くまで通じていたのではないでしょうか。この建物も、かつては名勝を望む旅館・料亭だったようで、周辺には他にも旅館があったようです。

国主渕

2階から眺めた「国主渕」。対岸の木々に隠れているあたりが、名前が付けられた大岩と思われます。
この日は田植え時期なので下流の堰堤でせき止めて多めに水を貯めており、また前々日の雨で水が濁っていますが、普段はもっと綺麗なようです。
なお見えているつり橋は現在通行不可となっています。

宿泊施設として活用

2階

「田舎暮らしレポート」なので、普段は移住した方を紹介しているのですが、今回はちょっと違った使い方をされています。

その使い方は、「一棟貸しのゲストハウス」。

オーナーは普段大阪に住まわれていて、大阪でも家庭菜園やヤギを飼ったりされているそうです。ゆくゆくは移住したいとのことで数年前から希望に合う物件を探しており、昨年初めにこの物件が出たときにほぼ即決で購入し、リフォームして宿泊関係の許可をとりました。

自分が「田舎暮らし」をするのではなく、お客様に「田舎暮らし」を体験いただくゲストハウスとしてオープンしました。他にあまり例が無いように思いますが、安定して利用いただいているとのことです。

眺望・檜風呂・交通・・希望通りの物件

元旅館・料亭とのことで基本的な設備はあったのですが、かなり以前に営業は終了していたため屋根や外壁の補修などは必要でした。

また内装もリフォームしました。「費用も掛かるのでそれほど大きくは変えていないんですよ」とのことですが、そうとは思えない心地よく現代的な雰囲気が漂っていました。

川面を眺めるリビング。椅子・テーブルはこの雰囲気に合わせて購入。またカーテンは視界を遮らないシェードカーテンですっきり。
下の道は狭いので車はほとんど入ってこず、一段高くなっていてカーテンを開けていても視線が気になりません。

1階和室。5畳の小さな和室ですが、川面を見ながらゆったりとくつろげます。

日本旅館のような檜風呂。小さなものですが、檜の香りが爽やか。

希望に合う方に泊まってほしい

豊原様は外国語にも堪能で海外在住経験もあることから、外国の方にも和歌山の魅力を知ってほしい・来ていただきたいとの思いで、現在はAirBnBで予約を受け付けています。

「和歌山県は気候も風土も食材も人柄も素晴らしいところ。これからもっと訪れる人が増えるはず」と豊原様。だからこそ、満足して帰ってほしい。そこで、問い合わせがあったときにお客様の要望に本当に合っているかどうかを何度もやり取りして、お客様に決めていただいているようです。
また、来られるお客様にはできるだけ要望がかなうよう、周辺の紹介を行ったり、チェックイン・チェックアウト時には直接会ってお話をされているとのことです。

2階のパノラマ(Googleストリートビュー)

googleストリートビューへリンクします(クリックするとgoogleストリートビューにリンクします)
2階には和室・板の間・広縁があり、貴志川を見下ろす眺望と対岸の緑が素晴らしい借景になっています。
訪れた日も、断食座禅のサークルが数日泊まっておられたようですが、そんな用途にもぴったりですね。
広いので、1階の和室を合わせて最大15名まで泊まることができます。

続きの庭にあるスペース。バーベキューにもぴったり。
ここも一段高くなっていて、2階から直接出入りできる裏口があります。また可動式の「かまど」も作っている途中で、「ぜひかまどでご飯を炊く体験もしてほしい」とのことでした。

かつて屋形船があった名残でしょうか、建物のすぐ前から河原に降りる階段もあります。カヤックも貸し出しており、すぐに下ろすこともできます。

海外の方にも利用してほしい

豊原様は、英語はもちろんスペイン語も堪能とのことで、「熊野古道がスペイン・サンティアゴの巡礼道と姉妹道提携しているので、スペインの方々にも利用してほしい」とのこと。

熊野古道からは少し離れていますが、訪れてもらえるよう周辺の魅力を発掘して、こちらでも楽しんでいただきたい。

いろいろなフルーツが採れる紀の川市なので、敷地内に別棟を建ててフルーツを利用したカフェもしてみたい。

同様の施設を作って、もっと皆さんに利用してもらいたい。

いろいろと夢が広がっているようですが、豊原様なら「夢」ではなく必ず実行されるのではないでしょうか。


貴志川町・紀の川市のご紹介

猫の駅長「たま」のいることから有名になった「貴志駅」。駅舎も猫の形をしています。
※現在の駅長は「スーパー駅長 ニタマ」
(貴水苑から徒歩約7分)
和歌山電鐵貴志川線は、写真の「たま電車」のほかにも「いちご電車」「おもちゃ電車」など楽しい電車が走っています。

紀の川市桃山町は「あら川の桃」で有名な桃の産地。「桃源郷」と呼ばれ、春には桃の花がいっぱい。
(貴水苑から約7km)
桃畑を「最初が峯公園」から見下ろすと、一面ピンクのじゅうたんのようです。
(貴水苑から約11km、車で約30分)